デッドオブウィンター
本格的に寒くなってきた今年の冬。窓の外の冷気を肴に、温かい部屋で遊びたくなるゲームです。ゾンビテーマの協力ゲーム。ルールの多さは重量級。2-6人。
プレイヤーはゾンビがあふれる世界で生き残った人間。砦を守りつつ、ゾンビを規定数倒したり、生存者を見つけたり、シナリオに決められたミッションをクリアするゲーム。
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迫るゾンビ
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砦に篭城する人間たち
ものすごいざっくりした流れ
ボード全体
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メインボード(砦)と6箇所の他の施設(それぞれのデッキからカードを引いてアイテムが手に入る)
シナリオのクリア目標である大ミッション(ゾンビを規定数倒したり…)と、
毎ラウンド公開される危機の小ミッション(特定のカードを全員で捻出する)
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ちなみにこれなら「薬」マークのあるカードを人数分捻出する。
がある。
それらをクリアするために、ひとりひとり順番に手番を行う。
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担当するキャラを動かす。担当キャラは通常複数いる。特定の誰かを操るって言うより、数人からなるチームを担当するって感じ。だから自分の担当キャラのどれかが力尽きても、即脱落にはならない。
ゾンビを攻撃したり、物資を集めたり、小ミッションに必要なカードを拠出したり、ごみを捨てたりする。
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キャラはたくさんいます
全員が手番を終えたら、
①備蓄食料が足りてるかチェック。不足なら士気ダウン。士気がゼロになるとゲームオーバー。
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②ごみが溜まりすぎてないかチェック。溜まりすぎなら士気ダウン。
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みんなが使ったカードはここに溜まる。
③小ミッションがクリアかどうかチェック。出来てないならさまざまな悪い効果+士気ダウン。
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みんなが裏向きに出したカードをチェック。
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足りていればクリア
③ゾンビ増加処理。許容量を超えたゾンビ分、人が食われる。食われれば士気ダウン。物音を立てた分、そこにいる生存者の分、ゾンビは増える。
④大ミッションクリアしてるかチェック→してなければ次のラウンドへ。
を繰り返すゲーム。
よくある協力ゲームと一線を画すのが、こちらの密命カードの存在。
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これは個人に与えられるミッション。クリアしていないとチームは勝利しても自分だけ勝利でないことになってしまうので、みんな、大小ミッションの合間を縫って、また時に他のミッションよりも優先させて、密命をクリアしようとします。内容は他プレイヤーに見せてはいけません。
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種類はいっぱい
密命カードの中には裏切り者として行動するカードもあります。裏切り者は特定の条件を満たして、チーム全体を敗北させなければなりません。
いざクリア失敗に向けて邪魔しようとすれば、簡単に致命的なダメージを与えられるのですが、プラスアルファの特定の条件が厳しくて、ぎりぎりまでは仲間のフリをして準備しなければなりません。早めに正体がばれると投票で追放されてしまいます。(ゲームからは抜けないけど行動制限を受ける)
陣営としては裏切り者じゃないんだけど、密命のために不自然な行動を取らなくてはいけない瞬間があって、お互いが疑心暗鬼。裏切り者も行動しやすい。
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んながどこかで自己中心的にならなくてはいけない
心理戦+お芝居を演じる楽しさが生まれる仕掛けです。
感想
正直、けっこう重いゲーム。遊ぶメンバーを選ぶ。少なくとも老人子供交えたファミリーゲームには適しません。
まずルールが多い!
移動するときは感染ダイスを振る…感染したら移動先でも再感染が起こる…
ゾンビの攻撃はこうする…ゾンビじゃなくて人間への攻撃はまた処理が変わる…
などなど
心理戦メインのコミュニケーションゲームを想定してると面食らうと思います。
そして、その大量のルールを全員が把握していないと満足に遊べません。このあたりがハードル高い。
特に裏切り者は、人に相談できない中で、あらゆるルールを駆使して目的を達成しなくてはいけないから、細かいところまで理解していないといけません。
インストの際、一気にマニュアルを読んでるだけだと、後半まったくみんなの頭に入っていかないので、説明しながら1ラウンド回した方がいいでしょう。
おまけに、ダウンタイムが長い。人数が多いほうが楽しいゲームなんだけど、一人ひとりのターンで、数分かかる。しかもその間あまりやることが無い。2時間遊んでも、「え?そんな経ってたの?」っていうゲームもあるけど、このゲームは、待つ時間が多いので、しっかり2時間を体感します。ゲーム慣れしてればサクサク出来るけど、そういう人ばかりでないですしねー。
そんなハードルが高いゲームではありますが、このゲームを継続的に楽しめるメンバー(ルールが把握出来て、映画みたいなロールプレイが楽しめて、ゾンビ好き)を4~5人見つけられた人は幸せでしょう。
「何者かになれる」というのがボードゲームの最大の魅力のひとつ。
たくさんのルールは、分厚い世界観を作り出します。
寒さが簡単に命を奪う世界で、ゾンビと戦うサバイバーの一人になりきり、
いるかもしれない裏切り者に目を光らせながら、
仲間と協力し、困難にギリギリ打ち勝つ喜びを味わえるゲームです。
プレイ体験を、そのときだけのオンリーワンなものに変えてくれるのが交差点カード。
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運命の分かれ道、交差点カード。
手番プレイヤーのひとつ前のプレイヤーが一枚引いて内容を確認します。
他のプレイヤーが発動条件を満たしたら、カードを読み上げて、指示に従います。
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たとえばこんな体験ができます
突っ切ると砦まで近道の凍った湖。足元の氷にはヒビが入ってる…。
渡る?渡らない?
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老人子供を見捨てる投票が砦内で始まっちゃった!
砦内にキャラを置いている人は投票だ!
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誰も発動条件を満たさなかったら、そのまま捨て札。
大半捨て札なんだけど、時々、忘れた頃にやってきて、多彩なドラマを生んでくれます。
実際のラウンドの例
自分の番が回ってきた。でも、周りの様子からすると小ミッション達成は無理目かな…
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でもとりあえず、小ミッション達成をあきらめずに食料を探すことにする。
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そしたらまさかの…
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え~~~…
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心折れるほうみ。もう小ミッションはいいや。自分のミッション優先しよーっと。嘘ついて、いらないカード捨てまーす。
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やがて全員の手番が終わって、小ミッションの前に集まったカードを確認すると…
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指定以外のマークのカードは、ただのゼロでなく、指定マークのカードを1枚潰してしまう。だから裏切り者にとって邪魔するのは簡単。通常プレイヤーはそれを見越して多めに入れたりもする。
いらない疑念を生んでしまう。
裏切り者がほくそ笑む。
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プレイを思い浮かべると、ゾンビと格闘してる映像よりも、仲間同士疑いあったり、弱者を切り捨てる投票をしたり、そういう人間のおどろおどろしい部分があらわれた場面が浮かびます。そこはたぶん製作者の狙い通り。ウォーキングデッドのロールプレイを味わえます。よくもまあ、ボードゲームでこれを達成したなぁと感動します。
そんな極限状態のロールプレイはロールプレイとして楽しめて、実際のプレイ中は、プレイヤー同士、本当にいがみ合う雰囲気になるわけではありません。「あー、あるある!こういうシチュエーション!」「うわーー!その交差点カードの発動条件にぶつかる?普通?」なんて、盛り上がりながら、ポップな雰囲気で、ミッション達成を楽しめます。
プレイ時間の長さとルールの多さは人を選びますが、いったんルールを把握してしまえば、細かいところまで考えられたよく出来たゲームです。たとえば小ミッションは人数分の指定カードでミッションクリアなんだけど、+2枚多く出せると、士気を1ポイント高められるのです。このルールのおかげで、すでに枚数の揃っているところに、裏切り者が邪魔カードを投入するのが自然にできるようになっていたりします。投票によって追放されても新しい密命を引いて、目標を変えてゲームに残れたりもします。そういう詰めがしっかりしているところもけっこう好きです。
この前プレイした際は久しぶりのプレイで細かいところを忘れてたので、5人プレイ、インスト込みで初心者シナリオ 2時間半かかりました。一度プレイすれば、もうちょっと時間短縮できると思うので、同じメンバーで違うシナリオに挑戦したいです。
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それらひとつひとつに紙製フィギュアがついていて気分を盛り上げます。
今回は年の瀬ということで真冬にプレイしたくなるゲームを紹介してみました。それでは良いお年を!